建物の取引と表示に関する登記

新築建物に関しては、「家を建てるまでと土地家屋調査士」で述べているとおり、土地家屋調査士は「建物表題登記」を扱います。

となると、既に建っている建物の売買に関しては、権利を移転するだけなので、土地家屋調査士の出番は一見して無いようにも思われます。

しかし、必ずしもそうとは限りません。
様々な理由により、建物の現況が登記された当時と違ってくることがあります。
登記記録と現況が異なるままで、その建物の取引を行うと、後々になってその取引が公正であったのかどうか、判断が難しくなってしまいます。
そのために、取引時点の現況を登記に正しく反映させることが求められます。

そもそも登記されていなかった…建物表題登記

何らかの理由により、建物が登記されないままで使われていたケースもまれに存在します。

建物を売買しようとして、登記がされていないことに初めて気づいたなどの場合には、その時点で建物表題登記を申請することになります。
登記原因を「何年何月何日(不明の場合は『年月日不詳』)新築」として申請しますので、申請日が新築扱いになるわけではありません。

建物の形状に変更があった…建物表題部変更登記

  • 増改築・一部取壊しにより建物の床面積に変更があった(増築と一部取壊しで結果的に±0である場合も含む)
  • 離れを新築した、または取壊した
  • 屋根の葺き替え、木造を鉄骨造にするなど登記されている構造の内容に変更があった
  • 登記当時は店舗だったが今は居宅にしている等、登記されている種類に変更があった
  • えい行移転により建物の位置が変わった

このような原因により、建物の登記されている内容と現況とが異なってしまっており、これを一致させたい場合には、建物表題部変更登記を申請します。

複数の建物で一つの登記になっているが、別々に取引したい…建物分割登記

例えば、母屋の離れとか、会社敷地内の倉庫などは、通常は母屋や会社建物を「主である建物」とし、離れや倉庫を「附属建物」として、一つの登記にまとめます。

この離れや倉庫のみで取引したい場合は、主である建物と登記を分けて、登記上一個の独立した建物にするため、建物分割登記を申請します。

但し、トイレや風呂のない離れとか、旧家でよくある便所だけの建物など、それだけでの独立性が認められな場合は、分割登記できません。

その他の登記

その他に、建物分割登記とは逆に、登記上別個となっている複数の建物を一つにまとめたい場合の「建物合併登記」、それら複数の建物が、通路増築などで物理的に合体している場合の建物の合体による登記など、変化の状況、申請人の意思に応じて、様々な申請が存在します。

土地家屋調査士は、現況と依頼人のご要望に応じて、適正な登記申請を選択し、手続きを行います。